【最新版】データで見る中途採用に最適な時期とは?繁忙期と閑散期

d’s JOURNAL編集部

転職市場には、活発な時期(繁忙期)と落ち着いている時期(閑散期)があります。時期に応じてマーケットの特徴を踏まえた採用を行うことが、採用計画達成の鍵となります。

今回は、転職市場の繁忙期と閑散期について過去のデータから読み解き、それぞれの時期に適した中途採用の方法について考えてみましょう。

以下、厚生労働省が発表している「一般職業紹介状況」のデータから、「新規求人数」「新規求職者数」「新規求人倍率」の推移を追い、繁忙期と閑散期について確認していきます。

「転職希望者が増える時期はいつなのか?」

新規求職者が増えるのは4月と1月、減るのは12月です。

新規求職者数

新規求職者数の折れ線グラフの波は、例年(過去5年間)おおよそ同じ形で推移しています。

新規求職者数

4月と1月に新規求職者数が多い理由

3月期決算の企業は4月が、12月期決算の企業は1月が期の初めとなります。部署異動や昇給・昇格などが行われるため、社員の生活や環境が変わる時期でもあります。特に4月は子どもの進学なども重なるため、環境や気持ちの変化が起こりやすく、選択肢の一つとして転職を検討する動きにつながっていると考えられます。

1月は、12月に冬の賞与を受け取り、1月に新年の自分のありたい姿と向き合うタイミングということもあり、4月以降の新年度に向けて転職活動を始める方が少なくありません。

12月に新規求職者数が少ない理由

12月は1年の終わりの時期です。年末で業務量が増えるなど、転職活動に力を入れられなくなることが考えられます。また、年の最後という心理的な面から、転職活動を新たに始めることを控える傾向もあるようです。

一方で、10~11月に転職活動をスタートしている方は、12月に最終選考を迎えることが少なくありません。新規求職者数は少ないですが、新年度に向けて転職活動を最後までやり切るという求職者が一定いらっしゃるため、中途採用担当者としては大切な時期と言えます。

「求人を募集する企業が多くなるタイミングは?」

新規求人が増えるのは10月と1月、減るのは5月と12月です。

新規求人数

新規求職者数の折れ線グラフの波は、例年(過去5年間)おおよそ同じ形で推移しています。

新規求人数の折れ線グラフの波も、基本的には例年同じ形で推移しています。2020年1月以降、新型コロナウイルス感染拡大や緊急事態宣言などの影響を受け、全体的に求人数が減少しましたが、徐々に回復基調に転じ、2021年1~3月にかけて、例年と同様に右肩上がりに増えていく傾向となっています。

新規求人数

10月と1月に新規求人数が多い理由

10月は、3月期決算の企業が上期から下期に切り替わる時期です。上期の実績に応じて、下期の予算や事業方針の見直しが行われ、組織に必要な人材の再検討とともに、求人数が増える傾向にあります。

1月は、12月期決算の企業では期が切り替わるタイミング、3月決算の企業では年度末までの予算消化の時期となり、採用手法を変えて募集をする企業も出てくるため、求人数が増える傾向にあります。

また、若手の未経験募集を積極的に行っている企業などでは、新卒採用の4月入社と研修を一本化するために、採用期間を逆算して、1月から募集をかけるケースもあります。

転職希望者が転職市場に多く集まる時期でもあるため、それに合わせて求人を開始する企業も少なくありません。

5月と12月に新規求人数が少ない理由とは?

5月は来年度の新卒採用の準備、4月に入社した社員の受け入れ(教育や研修)、社員の評価(昇進・昇格、夏季賞与など)などと重なり、中途採用の新規求人数が少なくなる傾向があります。特に新卒採用を人材獲得の柱としている大手企業では、新卒採用が一段落してから中途採用に着手するケースが多く、新卒と中途の採用担当者が分かれているケースでも、新卒採用に備えて中途採用の担当者が手伝う場合もあり、一時的に中途採用の募集が落ち着く傾向にあります。

12月は年末という季節要因で業務量が増え、企業が中途採用に力を入れられない事情があります。また、新規求職者が少なくなるのと同様に、心理的な要因から新たな募集を控える動きもあります。

「中途採用の繁忙期と閑散期はいつごろなのか?」

転職市場の繁忙期と閑散期

転職市場は、企業の採用活動が活発になる時期と、転職希望者が増加する時期とが重なった時に最も活発化します。反対に、どちらの活動も少ない時期は落ち着いている時期と言えるでしょう。

ここでは、景気変動の影響が少なかった2018年度と、新型コロナウイルス感染拡大の影響があった2020年度についてそれぞれ見てみましょう。

中途採用の基本的なサイクル(2018年度)

中途採用の基本的なサイクル(2018年度)

新規求人数、新規求職者数と新規求人倍率の推移を重ねると、新規求人数と新規求職者数のどちらも増加している1月は、中途採用活動の繁忙期と言えます。反対に、新規求職者数が落ち込む12月は中途採用活動の閑散期と言えるでしょう。

ここで重要なのは、中途採用の繁忙期が、中途採用を行うのに最適な時期とは一概には言えないということです。採用競合の少ない閑散期は求人倍率が低くなるため、人材獲得の狙い目であるとも考えられます。

求人数が多ければ、その分他社と競合する可能性が高くなり、かといって求人が少ない時期は、季節的な要因で転職希望者の登録も少なく、採用候補者が転職市場に出てきていないという側面もあります。

新規求人数の傾向が変わった昨年度(2020年度)

新規求人数の傾向が変わった昨年度(2020年度)

新規求人数、新規求職者数のピークが1月になる傾向は、例年と同様となりました。2020年1月の新型コロナウイルス感染拡大から1年が経過し、リモートワークを活用した働き方や新しい組織の在り方を模索する企業の間で、DX(デジタルトランスメーション)関連や、IT技術を活用した新たな職種の募集が増加しています。

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一方で2020年度は、年間を通じた繁忙期・閑散期のトレンドは、はっきり見て取れなくなっています。オンラインによる会社説明会や面接が広がったことによって、柔軟でスピーディーな選考が可能になり、新型コロナウイルスのワクチン接種後の景気回復を見据えた採用活動を開始する企業が、これまでのサイクルにとらわれずに増加したことが考えられます。

「中途採用を行うのに適した時期は?」

企業の基本的な事業サイクルを軸に考えると、年間を通じて3つの採用に最適な時期があります。

9~11月・・・新年に向けた転職を考える方が増える時期

3月決算の会社に勤める人にとって上半期が終わり、新年に向けて自分のキャリアを見つめ直すタイミングになります。採用を検討する企業が増える時期のため、求人数も増加します。1月入社を目標にしている方に加え、新年度の4月入社に向けて中長期的に転職活動をする方もいらっしゃいます。

年末や年度末の繁忙期に入る前なので、最終面接の決裁者のスケジュールも比較的調整しやすく、中途採用の体制が取りやすい時期とも言えるでしょう。

1~2月・・・年間で最も転職希望者の動きが活発な時期

転職希望者も採用する企業も、1年で最も活発に中途採用を行う繁忙期です。4月までに次のキャリアを決めたいという明確な目的で転職活動をする方が増える時期でもあります。

複数の企業を併願する方も多いため、選考辞退・内定辞退のリスクを加味しながら、積極的に転職希望者にアプローチすることや、柔軟なフォローをすることがとても重要になります。

6~7月・・・夏の賞与を取得した後、転職者が増加する時期

4月の新年度の異動や配属後3カ月の節目となるタイミングということもあり、新たな可能性を模索する方が増えます。夏の賞与を取得した後に転職したいと考える方々も、活動を始める時期です。

夏の長期休暇(お盆前後)を目途に転職活動を行い、10月以降の下期に備えて退職交渉を進め、新たなキャリアに進みたいと考える方々が多いのが特徴です。

「時期や募集する人材の特徴を踏まえた採用活動がポイント」

時期や募集する人材の特徴を踏まえた採用活動がポイント

時期に合わせて採用方法を見直すことが大切

中途採用を成功させるためには、繁忙期であっても閑散期であっても、その時期に応じて選考フローや採用手法などを柔軟に変えていくことが重要となります。

時期に合わせて採用方法を見直すことが大切

通常は、募集を開始してから1カ月半~2カ月半程度で採用できることが多いですが、エグゼクティブ(経営層・役員クラス)やハイクラス(事業部長やマネージャーなどの管理職)など、採用難易度の高いポジションの採用は3カ月~半年以上かかることもあります。加えて、内定から入社までの退職交渉・入社前フォローに時間を要するケースも増えています。

目標とする時期に新たな人材を迎え入れるといっても、転職希望者の状況は個別性が高く、コントロールが難しいというのが実情です。新規求人数の増減は、転職希望者の動向に加え、企業の決算期や新卒採用の時期など、企業側の動向とも深い関わりがあります。

自社が採用コストをかけられる時期、採用担当の人員を割くことができる時期などを考慮して採用計画を立てることも重要ですが、それと同じくらい柔軟でスピーディーな選考に対応できることがポイントとなります。

繁忙期のポイント:選考スピードを速めること

中途採用が活発な時期は、転職希望者の人数が多く、応募が集まりやすい傾向にある一方で、他社と競合する可能性も高まります。そのため、採用競合となる他社よりも早く書類選考結果を伝えることや、オンライン面接などを併用し、いち早く応募者との接点や選考を進めることが重要です。アプローチが遅くなることで、面接が設定できずに応募辞退となってしまう可能性もあるので、注意が必要です。

閑散期のポイント:求人を出し続けること

閑散期のメリットは、他社と競合する可能性が低い点にあります。5月や12月などは、GWや年末年始の長期連休とも重なる時期のため、本格的な採用の繁忙期に備えて他社に先んじて募集をかけておき、転職希望者が自社の求人を見つけやすい状況にしておくことも、採用成功に向けたやり方の一つです。

募集する人材の特徴を踏まえる

技術系(IT・通信)の人材を募集する際には、プロジェクトベースで業務を遂行していることが多いため、転職希望者一人一人の繁忙期・閑散期を踏まえた、応募者への対応がとても重要です。繁忙期を知らずに対応してしまい、選考のタイミングが遅れたり、退職交渉に踏み切れずに内定辞退となったりする可能性もあります。

経理・財務などの人材は、決算や監査と重なると身動きが取れなくなり、1カ月以上選考が進められないなどのケースもあるため、期の変わり目には十分注意が必要です。

小売・サービス業にお勤めの方の場合、平日は都合がつきやすいという方もいらっしゃいますが、月曜定休・水曜定休など平日の休みが決まっている方もいるため、選考上の配慮・柔軟性が武器になります。

これらは一例ですが、業種・職種によって現職の仕事の繁忙期・閑散期のトレンドは違います。全体のサイクルを頭に入れつつも、対象となる人材の特徴を踏まえて採用活動を行うことも大切だと言えるでしょう。

まとめ

2021年度の中途採用マーケットは、新型コロナウイルス感染拡大前の水準まで回復しつつあり、ほぼ全ての業種・職種で増加しています。一方で、その増加率については、業種・職種によってかなり差が出てきています。これまで新卒採用を人材獲得の軸としていた企業にも、即戦力重視や募集~入社までのスピードの観点から、中途採用を強化していこうという動きが見られます。他社に先駆けて自社の魅力を伝えるために、今まで以上に転職マーケットの動きを察知し、柔軟に対応することが採用担当者に求められていくことでしょう。

文・編集/d’s JOURNAL編集部 白水 衛

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